事業用の煙突は、塗装によって様々なメリットが得られるのをご存知ですか?

そこで今回は、煙突を塗装すべき理由を踏まえたうえで、なぜ煙突が紅白で塗装されている場合があるのか、どのような工程で行うと寿命延長できるのかなど、プロの視点で解説いたします。

煙突を塗装すべき理由とは?

工場や施設において塗装をしていない煙突は少数です。

なぜ煙突は塗装をすべきなのか、その主な理由として下記の3点が挙げられます。

▼煙突を塗装すべき3大理由

・安全性(劣化リスクの予防、遅延効果)

・美観向上

・航空法の遵守

 

特筆すべきは、塗装によって煙突の劣化によるリスクを予防・遅延できるという、安全性についてでしょう。

工場や施設の煙突は、大きく分けて鋼板製(ステンレス製:SUS製)と鉄筋コンクリート製(RC造)の2種類があり、それぞれ塗装によって得られる効果に違いがあります。

▼材質によって異なる塗装の効果

・銅板製:錆の発生を抑制する効果

・鉄筋コンクリート製:コンクリート表面を保護する効果(中性化遅延)

つまり、工場の煙突を塗装する際は使用している材質によって安全面でのメリットが異なるため、目的に合わせた工法で行う必要があるのです。

 

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なぜ工場や施設の煙突塗装は紅白があるのか?

「事業用煙突のイメージは?」と聞かれると、紅白で塗装された大きな筒型を連想される方も

いらっしゃいます。

なぜ、煙突が赤と白のツートンカラーに塗装されているのでしょうか。

その理由は、国土交通省が管轄している航空法第51条の2第1項によって、地上から60m以上の高さがある建造物に対し、「昼間障害標識」または「航空障害灯」の設置が義務づけられているからです。

▼対象の建造物

・工場など事業用の煙突

・鉄塔

・電波タワー

・高層ビル

・斜張橋の主塔(吊り橋などを支えている塔)

 

昼間障害標識とは?

昼間障害標識とは、高さ60メートル以上の建造物に対して航空法で定められている、航空保安施設の標示ルールです。

飛行機を安全に運航するために法律で決められた「識別しやすい仕様」、と言った方がイメージしやすいかもしれません。

具体的には、下記のようなルールが定められています。

▼昼間障害標識の概要

・色の指定:赤または黄赤(インターナショナルオレンジ)と白

・順番:最上部に赤または黄赤、次に白の順に交互に塗色する

 

工場の煙突はもちろん、東京タワーが紅白で塗装されているのも昼間障害標識の一環なのです。

 

航空障害灯とは?

航空障害灯とは、夜間の飛行リスクを予防するために設けられた航空法の一種です。

こちらも地上から60m以上の高さがある建物および建築物が対象で、赤白の塗装とは別に3種類の障害灯を用います。

▼航空障害灯の種類

・低光度航空障害灯:明るさは10cd、32cd、100cdなどがあり、明滅しない点灯用

・中光度白色航空障害灯:建造物の高さによって設置個所が異なり、明滅する

・白色航空障害灯:60m以上が対象の中光度と150m以上が対象の高光度があり、閃光を発する

 

暗闇の中でもパイロットが障害物の存在を認知できるよう、航空障害灯を点灯または明滅(点灯と消灯を繰り返すこと)させて夜間飛行中の衝突を防止しているのです。

これらのルールをまとめると、地上60メートルを超える事業用の煙突は下記のいずれかを満たしていなければなりません。

▼航空法上のルール

・昼間障害標識塗装(赤白塗装)、および中光度赤色航空障害または低光度航空障害灯の設置

・中光度白色航空障害灯の設置

 

工場煙突の塗装事例

2000年に航空法が改正されて以降、高さが60m以上の煙突でも塗装できるカラーが選べるようになっています。

中には、企業のブランドイメージに合わせる、または周辺エリアの環境にマッチする色で塗装している企業も少なくありません。

▼煙突塗装の一例

・チャコールグレー系の躯体に、頭頂部だけ焦げ茶色のラインを二本入れる

・下から上へ向かって色合いが明るくなるよう、6色のグラデーションで塗装

・白の筒身に、頭頂部のみグレーを入れる

塗装事例を画像で確認したい方は、下記の記事をご一読ください。

 

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鋼板製の煙突を塗装する方法と工程

鋼板製の事業用煙突に対する塗装修復の工程は、下記の6ステップで行うのが一般的です。

経年劣化による腐食や錆の対処はもちろん、塗装し直すことで煙突寿命の延長化が計れます。

▼鋼板製の煙突に対する塗装補修工程の一例

・仮設工事:ゴンドラや足場などの設置及び塗料飛散防止ネットの設置

・下地調整:既存の塗膜及び錆の除去

・一層目:筒身の保護に特化した錆止め塗装

・二層目:長期の防錆、防食に特化した錆止め塗装

・三層目:中塗り塗装

・四層目:上塗り塗装

 

煙突の錆飛散防止について

 

コンクリート製の煙突を塗装する方法と工程

煙突塗装の修復には「錆対策」というイメージが定着しているため、「コンクリート製には必要ないのでは?」と思われている方も少なくありません。

しかし、コンクリート製には下記のようなメリットが含まれるため、定期的な塗装の修復を推薦しています。

▼コンクリート製を塗装するメリット

・クラックと呼ばれる亀裂進行を抑制し、中性化進行を抑制する

・メンテナンスの一環として清掃も含まれるので、汚染除去により美観が向上する

・コンクリート製の事業用煙突に対する塗装修復の工程は、基本的に下記の6ステップで行います。

 

▼コンクリート製の煙突に対する塗装補修工程の一例

・仮設工事:ゴンドラや足場などの設置及び塗料飛散防止ネットの設置

・下地調整:高圧洗浄機などを使って既存の塗膜、汚染物などを除去

・下地補修:クラック(亀裂)などを、モルタルやコーキングで補修

・一層目:Sクリートアップなどで中性化を抑制する

・二層目:アルカリ性の薬品を塗って、コンクリートを強化する

・三層目:上塗り塗装

・四層目:撥水塗装

 

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煙突塗装の修復はどれくらいの頻度ですべき?

結論から言うと、工場や施設の煙突に対して「〇年ごとに塗装の修復をすべき」といった厳密な規定、国が定めた法令や地方自治体による指針などはありません。

したがって、修復頻度の決定権は基本的に工場や施設のオーナーに委ねられます。

その理由は、下記のような要素によって劣化具合が違ってくるからです。

▼煙突塗装の劣化に影響を与える要素

・設備の使用条件

・発生している排気ガスの状態

・立地条件や環境による影響(海からの距離、風の強い地域など)

 

前述した通り、煙突に対する塗装の修復は見た目の改善もさることながら、「錆飛散の防止」および「コンクリートの剥離防止、中性化抑制」といった大きな目的があります。

そのため、錆の発生具合またはコンクリートの状態によって多少の差はあるものの、事業用煙突の塗装は「5年~10年に1度」程度のスパンで修復するのが一般的です。

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まとめ

工場や施設など、事業用の煙突は塗装によってイメージがガラリと変化します。

周囲に圧迫感を与えがちな建造物だからこそ、環境や事業イメージに合わせたカラーリングを選んでみてはいかがでしょうか。

何より重要なのは、塗装を修復することで煙突寿命が延長するという点です。

定期的な点検を行ったうえで、必要に応じて煙突のお色直しも検討してみましょう。

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