街から少し離れてドライブをしていると、さまざまな工場の煙突を見かけることがあるでしょう。意識して見なければ、すべて同じ形のように見えるかもしれません。
しかし、実はさまざまな種類があるのです。使われる材質によっても感じが変わりますし、高さもまちまちです。カラーについても、よく見るとさまざまな色合いが使用されていることがわかるでしょう。
この種類について説明する前に、まずは定義について確認してみましょう。
煙突とは、高温の排ガスを大気に放出するための設備です。形状は垂直方向で筒状の高さが充分に高いものとなります。この高さが高くなるほどに、排ガス中に含まれている大気汚染物質は上空に拡散されやすくなります。人々が生活している地表に届く前に、大気汚染物質が拡散されるように工夫されることが多いです。
ちなみに、形状だけで言うと、排気筒や臭突もそっくりです。これらは、筒から排出されるものの違いで区別されます。排気筒は常温に近い温度のクリーンなガスを放出する設備です。臭突は、臭気をもったガスを放出するための設備です。
用途としては、ゴミ焼却場用、ボイラー用、石炭や火力などといった発電用などがあります。銭湯にも設置されています。
新設の煙突工事を行うときには、事業の内容によって設計が異なります。設計する際は、はじめに排出される煙の上昇能力(通気力といいます)を算出し、設備の高さと径を決めます。
新設の煙突工事においては、大まかに、コンクリート製と鋼板製(ステンレス製)の二種類があります。コンクリート製の煙突は、独立型や内筒型、そして建屋付属型等があります。鋼板製の煙突にも独立型があります。そして、支枠付や建家支持型等があります。
コンクリート製にするか、鋼板製にするかを決定したあと、構造を決めます。そして、鉄筋量や板厚を決めていきます。
塗装色も一色ではありません。同じ形状であっても、カラーが異なるだけでイメージが変わります。
工場のイメージに沿った色にしたり、周辺環境に合った色にしたりすることで、事業のイメージも向上します。
また、鋼板の材質等も選択し、事業にとってぴったりな設計を行います。
たとえばゴミ焼却場用の場合、燃焼ガスを外へ排出するための鋼製内筒と、地震や防風に備えて内筒を支える鉄筋コンクリート製の外筒から構成されています。近年では、高強度コンクリートが使用されることがあります。
火力発電所用の場合は、環境に配慮して、排ガスを高層大気中に放出するように工夫されています。高さが充分にあり、耐震や耐風にも優れた設計が行われます。
事業によって少しずつ違いがありますが、どの設備においても、耐震や耐風について優れるように設計が行われます。高さがある設備なので、自然災害に備えられる充分な構造をしていなくてはなりません。
ここから、新設の煙突工事についていくつか紹介します。
コンクリート製独立型のタイプは、ジャンプフォーム工法で建設していきます。
ジャンプフォーム工法とは、内部に地上から足場を組み立てていき、型枠の組み立てや取り外しを行っていきます。外部についてはブラケット足場と吊り足場の両方を使って施工します。
内部に煉瓦を積み上げていき、建設することもあります。
建屋付属型にするときというのは、排ガス量が少ないため口径を小さく設計することができる場合(口径が概ね直径1メートル以下)や、高さが概ね20メートル以下になるような比較的小さめの場合等です。
建屋付属型とは、建屋内部に設置するタイプです。建屋の壁面に対し、熱伝導によって影響を及ぼすことがあるので、内部の断熱に気をつける必要があります。
鋼板製とコンクリート製を比較したとき、鋼板製は工期が短いというメリットがあります。また、コンクリート製よりも小規模にできるということや、建て替えが簡単だというメリットもあります。
新設するタイミングというのは、新しい工場を建てるときだけでなく、それまで使用していたものが使えなくなったときも考えられます。
たとえば、コンクリート製の内部にアスベストが含まれていることが発見されると、その設備は使うことができません。そのため、新たに鋼板製を設置することがあります。
アスベストが発見された設備については、頂部に閉止板を設置してアスベストが外に漏れないようにします。
新設するに至らない場合でも、改修工事が必要になることはあります。長い築年数が経過し、老朽化が激しい設備については、安全面から考えても改修工事を行う必要があるでしょう。
それぞれの事業にぴったりな設備を建設するためには、やはり設計担当者や建設を行う事業者との連携が大切になります。
また、事業主だけでなく周囲の人々も安心して暮らすことができるような設備を検討しなくてはなりません。
いろいろな煙突は、その事業や、工場のある地域に優しい設備となるように設計されて建てられたものなのです。