工場といえば、どんな設備があると想像するでしょうか。さまざまな物が収納されているコンテナや、機械が忙しく動いているイメージをするかもしれません。
外観に関していうと、必ずといっていいほど、空に伸びる円筒状の設備をイメージするのではないでしょうか。
どんな工場でも、さまざまなものを処理していく上で、排気ガスが発生することがあるでしょう。この排気ガスを外に逃すことが、煙突の一番の役割です。
また、排気ガスをそのまま逃すのではなく、環境に配慮して、できるだけ無害化して外に出します。新しい工場を作るときには、排気ガスをどうやって無害化するかということが検討されます。煙突工事の前に、周辺環境を考慮した設計・計画がなされるのです。
どんな工場でも同じように排気ガスを出しているというわけではなく、その工場でどのような物質を扱い、どのような処理が行われるのかという内容によって、排気ガスの排出の仕方は異なります。
また、設備の設計段階で、どのくらいの高さにするのかということや、内径をどのくらいの大きさにするのかということも検討されます。これもまた、工場の性質や規模によって異なってくるでしょう。
たとえば、あるゴミ焼却場の例を挙げてみます。
ゴミは、ゴミ収集車によってゴミピットに投入されます。そこからゴミを定期的に焼却炉に送り込みます。焼却炉でゴミを燃焼すると、排ガスが発生します。
排ガスは、環境に配慮して無害化しなくてはなりません。排ガスに消石灰を噴霧することで、排ガス中の塩化水素を反応させ、取り除いていきます。また、バグフィルターというろ過用の布に排ガスを通過させることで、塩化水素ガスや微粒子を取り除きます。これできれいになった排ガスを、煙突に送って外に出すのです。
どれだけ設備のなかで排ガスをきれいにしたとしても、外にきちんと排出することができなければ困ります。最後にきちんと外に送り出す仕組みは、ゴミ焼却場にとってもとても大切なものです。
また、製油所の工場の例を挙げてみます。
石油などを精製する工場では、原油を熱分解することによってガソリンや軽油を作り出します。ガソリンや軽油といえば、ガソリンスタンドで馴染みのあるものでしょう。これらを作るときには、メタンなどの炭酸水素ガスが発生します。また、ときに硫黄水素といった有毒なガスが発生することがあります。
硫黄水素などの有毒なガスは、そのまま待機中に放出するわけにはいきません。そのため、フレアスタックを使って無害化します。
フレアスタックについては、もしかしたら知らない方も多いかもしれません。ときどき、煙突の先端で炎が燃えているのを見かけたことはあるでしょうか。じつは、この炎がフレアスタックなのです。
有害なガスも含め、余剰ガスについては、ガスを回収してリユースする方法もあります。しかし、リユースは非常に高度な技術を要することや、莫大なコストがかかるといった問題点があります。かといって、ガスを貯めておくと、万が一引火したときには爆発する可能性があります。
そのため、高い塔の先で燃やすというフレアスタックが行われます。フレアスタックならば、工場内で引火するリスクを下げることができ、コストも抑えることができます。
最近はほとんど見かけることはないかもしれませんが、かつて、黒煙が発生しているのを見たことがある方もいるかもしれません。黒煙は、ガスの不完全燃焼により発生するもので、いわゆる燃え残りです。
フレアスタックが行われるときには、黒煙を防止する工夫がなされています。黒煙、つまり燃え残りが周辺環境に拡散しないように、フレアスタック設備の頂部にはスチームを吹き込む仕組みがあります。スチームを吹き込むと、可燃性ガスと空気がよく混ざり合うようになり、完全燃焼します。完全燃焼した場合は、黒煙が出ることはありません。
また、完全燃焼したときの火炎を無煙にすることもできるのです。
ただし、フレアスタックに問題点がないわけではありません。燃焼ガスによる輻射熱や、設備が作動している間の騒音、可視炎というような、周辺環境への影響があります。
周辺環境に対する影響を抑えるために、フレアスタックにもさまざまな種類があります。もっとも一般的なフレアスタックは、架構支持型と呼ばれるものですが、ほかにもワイヤ支持型や自立型といった種類があります。
グランドフレア型は、夜間照明や騒音などといった周辺環境への影響を抑制することができます。景観にも配慮することができるため、周囲の景観に溶け込むような設備を求めている場合にも、グランドフレア型は適しているかもしれません。
輻射熱を軽減する型としては、バーンピット型があります。
製油所の工場においても、排ガスをできるだけ無害化して放出しています。これからも、環境に配慮した排ガスの放出の仕組みが考えられていくことでしょう。そのなかで、煙突工事は大切な役割を果たしていくことになるでしょう。